2013年12月22日
警察の拳銃捜査の現状
「餃子の王将」を展開する王将フードサービス(京都市)の社長が射殺されるなど銃器犯罪への不安感が高まっている。警察当局による拳銃押収量は近年、頭打ち傾向で、特に拳銃所有の大半を占めるとされる暴力団からの押収は減少の一途をたどる。平成24年の押収量は平成以降のピーク時の1割に満たない95丁で、25年はさらに下回るのは確実だ。警察当局が厳罰化などで「平成の刀狩り」に乗り出して20年余り。捜査関係者は「凶悪事件防止には暴力団からの押収が重要」としている。(荒船清太)
山口組から分裂した一和会と山口組が激しく対立。竹中正久4代目組長が射殺されるなど、200件以上の発砲事件が起きた昭和59年〜平成元年の「山一抗争」に続き、2年には山口組が東京・八王子での抗争事件を機に東京に本格進出。4年には、自民党副総裁だった金丸信氏が栃木県で講演中に狙撃されるなど、同年の年間発砲事件は222件に上った。
警察庁は4年以降、暴対法施行や発砲罪の新設、所持罪の厳罰化、専従捜査態勢の整備などの対策を打ち出し、「平成の刀狩り」と呼ばれた。警察庁長官銃撃事件が起きた7年には平成以降で最多の1880丁を押収、暴力団関係者のものが1396丁を占めた。
暴力団側は捜査員との接触を禁じることで対抗。7年以降は押収量の減少に歯止めがかからず、過去の密輸事件の記録などから3万〜5万丁とも推計される暴力団関係者所有の拳銃のうち、25年の押収量は10月末時点で55丁にとどまる。
警察当局は、改造して殺傷能力があるモデルガンや、軍関係者が戦前から保管していた拳銃の押収も進めており、25年は10月末時点で暴力団からの押収を大幅に上回る350丁に上る。ただ、警察関係者は「ガンマニアが銃撃事件を起こすとは考えにくい。凶悪事件を防ぐには、暴力団からの押収を進めるしかない」と強調する。
「あらゆる手段を使って拳銃を押収せよ」。警察庁は7年11月、全国の銃器担当捜査員を集めてげきを飛ばした。同年には警察官が拳銃を買い受ける「おとり捜査」も解禁。銃器捜査は新たな局面を迎えた。
だが、これを境に顕在化したのは違法捜査。銃器担当捜査員が協力者の暴力団関係者に捜査情報を流すなど、ミイラ取りがミイラになる不祥事が相次いだ。
極めつきだったのは14年、北海道警で銃器捜査の「エース」と呼ばれた警部が、協力者から入手した拳銃を所有者不明の拳銃として押収したように見せかけていたことなどが発覚。さらに拳銃を密売していたとして、銃刀法違反罪などで有罪判決を受けた。
暴力団側の秘匿工作も巧妙化を続け、警察当局の捜査が後手に回るようになった。組員の拳銃所持の責任を組長に問えるとして、9年に山口組最高幹部が警視庁に逮捕されてからは、特に暴力団側の情報管理が厳しくなったとされる。
警視庁幹部は「大量の拳銃があるとの情報で暴力団の関係先を捜索したら模造銃だったことがある。警察に情報を漏らす人物をあぶり出すため、偽情報を暴力団側がわざと流している疑いがある」と分析する。
警察幹部は「道警の事件を機に、拳銃の摘発を現場に強く指示しづらくなった」と指摘。「銃器捜査を立て直すには、拳銃の情報と引き換えに罪を減免する司法取引の導入も検討すべきだ」と訴えている。(産経新聞 12月22日(日)7時55分配信)
Posted by So-Sui at 21:30
│◆The Case of gun